
日本では2019年10月より消費税が10%になりました。
消費税がアップした理由は、福祉や社会保障の財源確保です。
投資家の中には、財源確保という言葉を聞くと「ギリシャ経済危機」を思い浮かべる人もいます。
そこで今回、ギリシャ経済が破綻した背景や現在のギリシャの財政状況についてまとめました。
また、ギリシャと日本の財政状況の違いについても紹介しています。
国債などの投資に興味のある方や投資を始めるにあたり、世界情勢について知っておきたい人は必読です。
Contents
ギリシャ経済危機とは?
ギリシャは2011年に財政危機を起こしています。
財政危機の大きな原因は、偏った公務員システムと年金制度です。
2010年当時、ギリシャの労働人口の4分の1、全人口の10人に1人が公務員でした。
勤務時間はかなりルーズで、時間通りに出勤すれば特別手当が支給するといった問題を抱えています。
年金制度についても、当時は55歳から支給を受けることができたり、リタイヤ前の給料の約90%を受けることができたりするといった問題が起きていました。
ギリシャ経済はデフォルトに陥る
公務員の給料や年金の支給によってギリシャの財政は傾きますが、ヨーロッパ連合やIMF(国際通貨基金)からの融資によって、借金を借金でまかなうという「自転車操業」を行っています。
しかし、最終的にはギリシャは外国やIMFによる融資を受けることができなくなり、借りたお金を返せなくなるデフォルト(債務不履行)に陥りました。
ギリシャ危機の影響
ギリシャ経済危機はギリシャ国内や海外の経済に大きな影響を与えました。
ギリシャのデフォルトが確実になったときには、ニューヨーク株式市場のダウ工業株が大幅な反落を起こしています。
さらに、ヨーロッパを最大の輸出先にしていた中国でも、中国人民銀行が追加緩和を発表したものの、上海総合指数は7%を超える下落となっています。
日本の日経平均株価についても、ギリシャのデフォルトに対する世界経済の影響が懸念し、大幅な反落を起こしました。
ギリシャ国債は上昇する
ギリシャ国債については、財政問題によって大きく暴落し、10年債券利回りは30%以上にまで上がりました。
また、ギリシャ国債の格付けは下がり、ムーディーズやS&Pでは、「投機的な債権、財務力が不十分であり債務不履行の可能性がある」BB+までランクを落としました。
現在のギリシャの状況
現在のギリシャの財政状況は以下の通りです。
ギリシャの政府総債務残高
2018年のギリシャの政府総債務残高は3,414.5億ユーロです。
2012年と比較した場合、323.7億ユーロ下がっていますが、過去5年間では一番高い数字となっています。
ギリシャの政府総債務残高GDP比
2018年のギリシャの政府総債務残高GDP比は184.85%です。
2012年と比較した場合、4.29ポイント高くなっています。
また、過去10年の中で一番高い数字です。
ギリシャの財政収支
2018年のギリシャの財政収支は、17.7億ユーロの黒字です。
2012年のギリシャの財政収支は212.8億ユーロの赤字だったため、かなり改善したといえます。
ギリシャのプライマリーバランス
プライマリーバランスとは、過去の債務についての元利払い以外の支出、公債などを除いた収入との収支を意味しています。
2018年のギリシャのプライマリーバランスは、79.3億ユーロの黒字でした。
2012年のギリシャのプライマリーバランスは、27.9億ユーロの赤字だったので、かなり改善しているといえるでしょう。
ギリシャの歳入
2018年のギリシャの歳入は880.6億ユーロです。
2012年のギリシャの歳入は883.4億ユーロだったため、ほぼ横ばいの数字であることがわかります。
ギリシャの歳出
2018年のギリシャの歳出は862.9億ユーロです。
2012年のギリシャの歳出は1,008.8億ユーロだったため、歳出は減少したことがわかります。
ギリシャの財政は以前と比較して安定している
2010年からはじまった経済危機でしたが、2018年8月にはヨーロッパ連合による金融支援プログラムを終了させることができています。
そのため、再びギリシャ国債を発行することが可能な状況です。
欧州中央銀行やIMFによる財政管理は必要なくなり、自力での資金調達が可能となりました。
リスクオンの状況が続く
また、2019年7月にはギリシャの長期金利が2.014%にまで下がっています。
2012年には30%以上でしたが、現在では過去最低の水準にまで下がっている状況です。
2015年に15%まで金利が上昇しギリシャショックの不安が再燃しましたが、2019年に政権交代が行われ、再びリスクオンの状況が続いています。
2019年のギリシャの経済成長率は1.9%です。
わずかですが、経済成長を続けており、財政状況がよくなれば、さらに経済成長率がアップすると期待している声もあります。
ギリシャの財政について悲観的な意見もある
一方で、ギリシャの将来を不安視している声もあります。
理由のひとつはギリシャの失業率です。
ユーロ圏の平均失業率は8.3%ほどですが、ギリシャの失業率は19.5%ほど、若者の失業率は44%まで上昇しています。
若者の中には仕事を求めて海外に移住する人もおり、その結果ギリシャの人口は3%減少しました。
そのため、内需の落ち込みを懸念している人もいます。
また、ギリシャは2022年までにプライマリーバランスのGDP比を3.5%の黒字にすることをヨーロッパ連合に約束しています。
そのため、引き続き緊縮財政を続けなければならず、債務削減が求められている状況です。
ギリシャ国債を扱っている証券会社もある
日本の証券会社の中には、ギリシャ国債を取り扱っているところもあります。
また、最近ではギリシャ国債の3カ月物短期国債発行利回りがマイナスになりました。
そのため、魅力的な投資対象として注目を集めています。
日本の財政状況
ギリシャの財政状況を日本の財政と比較する人がいます。
ギリシャの政府債務はGDP比で180%を超えていますが、日本の政府債務はGDP比で230%以上あり、ギリシャよりも高い数字となっています。
また、日本の2018年の財政収支は17兆6,408億円の赤字となっているため、ギリシャのように大きな問題に発展するのではないかと懸念する人もいるようです。
しかし、日本の財政とギリシャの財政には大きな違いがあります。
ギリシャがデフォルトを起こしたときには、長期国債金が13%にまで上昇しました。
しかし、日本の国債については1%未満で推移しています。
日本の国債が上昇しない理由は、貯蓄が十分にあることです。
ギリシャと日本の違い
ギリシャ政府は、貯蓄が不足していたため、国債をほかのユーロの支援国に買い取ってもらっていました。
また、ギリシャの自国通貨であるユーロは、欧州中央銀行が発行しているため、通貨を増やすことができませんでした。
その結果、国債を返済できなくなり、最終的にデフォルトを起こしています。
日本は貯蓄が過剰の状態にあり、金融機関にもお金が余っている状態が続いています。
その結果、国債の需要が高く、金利が上昇することもありません。
また、日本の自国通貨である円は日本銀行が発行しており、貯蓄が不足する事態に陥れば、自国通貨を増やしてデフォルトを回避することが可能です。
まとめ
ギリシャは2011年に経済危機を起こしましたが、原因は労働人口の25%が公務員であったこと、年金の支給額が高すぎたことでした。
現在では、財政の健全化に向けての取り組みを続けており、ギリシャ国債を再び発行できる状況になっています。
ただし、依然として財政緊縮を行わなければならず、予断が許さない状況が続いています。
日本はギリシャと同じように政府債務はGDP比が高いという状態が続いています。
しかし、貯蓄がたくさんあり国債の需要があるので、ギリシャのようにデフォルトに陥る可能性は極めて低いといえるでしょう。