昨今、金融とITを融合したフィンテックという技術、人工知能、経済状況…銀行を取り巻く環境は刻々と変化しています。
特に地方銀行については生き残りにかけて週刊誌等でも取り上げられております。既存のビジネスモデルでは維持できなくなっている模様です。
それでは、現在銀行が置かれている状況と、今後について説明させて頂きます。
銀行の課題①利ざやモデルの変遷
銀行が何をしているのかを簡単にまとめると、貯金などで集めた資金に金利をつけて貸し出す融資、その資金を株などに投資する運用、また買収などを取り扱うM&Aなどで収益を稼いでいます。
その中でも事業融資や不動産ローンなど、金利に関するビジネスが最も想像しやすいのではないでしょうか。
低金利で預けてもらった資金に金利を高くつけて融資し、その金利の差(利ざや)モデルが一般的なものです。
最近、このビジネスモデルに変化が訪れています。日本がマイナス金利になっていることが最も重要で、歴史的な低金利状態であることがきっかけとなり、利ざやモデルの維持が難しくなってきました。
市場金利が低くなるということは貸し出す金利も低くなり、結果として利ざやの収益が減ります。実際、法人融資でも0.1%の金利がザラにあり、これではビジネスモデルとして継続していくことは難しいでしょう。
さらに、一般的には金利が低いということは借り手も多くなると思いますが、銀行の実情はカネ余りの状況となっているとのことです。2018年3月期の預貸率を調べると、なんと278兆円もの資金が貸出金に対する預貯金額であり、これは銀行に資金が余っていることを意味します。
数字だけを見れば、単純に資金を借りたい企業が減っているという見方ができます。しかし実情は単純なものではありません。主に企業への融資が難しくなっている理由は主に2つあります。
1つは、資金調達の多様化により、信用度の高い企業であれば、資金を得るのは銀行融資に限らなくなってきました。銀行が本当に融資したい優良な企業は、銀行からの融資だけが選択してはないということです。
また近年では、そうやって銀行から融資を受けにくい創業間もないベンチャー企業でも、クラウドファンディング(不特定多数の人がインターネットなどを経由して他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うこと)などもあり、資金調達が容易になってきています。
そして、そもそもの問題点ですが、最後に融資案件が増えていないことがあげられます。銀行は「銀行は雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」とよく言われるように、業績が好調なうちはどんどん融資をしますが、業績が悪化すると急に資金を回収します。
当然、銀行も慈善事業ではないのでリスクの高い案件には融資できません。内閣府の発表によると、現在でも2兆円ほどの不良債権が残っており、全体の1%近くを占めています。この数字は徐々に改善をしてきていますが、逆に言えばリスクの高い先への融資を減らしていった結果と見えます。
しかし東京商工リサーチによると、企業の倒産件数はアベノミクス移行で減少傾向となっています。景況感が回復している現在、従来のシステムでは融資案件が増えていくことは無いようです。
企業に対しては上記の理由のため融資案件が減ってきていました。そこで比較的金額が大きく、また借り手が多い不動産への融資を積極的に行っていたのが現在の状況です。
しかし不動産融資に関してはニュースで賑わっていたように、無茶な営業が不正な融資を引き起こして問題となりました。企業に対しての融資と不動産を購入する際にする融資の積極性には差がありました。
このように、銀行が従来より行ってきた業務の限界が見えてきています。
銀行の課題②ITの影響
フィンテックという、金融とITを融合した技術の台頭により、銀行業務は大きく変わろうとしています。
従来人の手で行ってきた窓口、審査等の業務が人工知能やシステム変化によっていらなくなる見通しになっています。
実際、みずほ銀行は1万9000人、三菱UFJ銀行は9500人、三井住友銀行は4000人分の業務削減を行う方針で、多すぎた店舗を統廃合していく流れになっています。
本業である利ざやモデルで稼げなくなった分、効率化を追求して人員削減へと方向転換しています。
ここまで銀行のモデルが変わろうとしていることは過去なかったことでしょう。
大手銀行もこの流れに沿ってITの導入とシステム変更を行っていますが、みずほ銀行のように何年もシステムトラブルを起こし、現在も完全になっていないことを見ると、まだ時間がかかるように思えます。
いずれにしても今後、ビジネスモデルの変遷から人員削減は避けられそうになく、またフィンテックの影響で業務が変わっていくため勤務している人に対する影響は少なくなさそうです。
今後の見通し
それでは、銀行の今後はどうなるのでしょうか。
銀行の市場は約22兆円と巨大なものであり、働く人は国内だけでも15万に及んでいます。それほどまでに巨大な市場が、今後大きく変わろうとしています。
ハーバードビジネスレビューでは今後新たな変革が出来なかった場合、約90%もの銀行が10年以内に消滅すると予想しています。「新たな変革」とは、IT化の流れに対応すること、また融資に依存したビジネスモデルからの脱却です。
既に述べた通り、銀行窓口や審査、データ入力などは人工知能によって人の手から変わっていくと言われています。現在では無印鑑口座も多く、またネットバンキングも普及しているため銀行の支店という存在意義が問われています。
また銀行は利ざやモデル以外にも、投資信託や保険などを販売する手数料ビジネスも行っています。近年は融資だけでは稼げないため、金融商品の販売による手数料収益が増えてきましたが、銀行マンはそもそも証券マンと違い相場が専門ではありません。
その資産運用のコンサルティングも融資と並行して行っているため、手数料の高い投資信託、保険を販売しなくてはなりません。
相場観と高い手数料も理由になり、国内銀行の窓口で販売された投資信託の実に49%が含み損を抱えている状況となっています。
今後はその資産運用コンサルティングにも人工知能、ビッグデータといった技術が使われていくでしょう。投資をするにはその人のキャッシュフローについて精査し、どのような資産運用をしていくかを検討しなくてはなりません。
ここを人の手でコンサルティングをすると、手数料が運用資産の2%程度になるところ、IT技術を活用すれば1%代まで減らすことが可能です。
このような状況を考えると、もともと本業である法人融資も人工知能に変わっていくことは容易に想像できるでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
銀行の課題、そして今後の見通しについて説明させて頂きました。
今後変わっていくことはどの業界も同じですが、特に銀行は市場規模から考えると人員削減のインパクト、業務の変遷が話題になっています。
私たちの生活にも影響する可能性があるという点でも注目されています。景気が良い状況では順調に業績が上昇していましたが、今後は横ばい、また銀行同士の合併も発生して減少していくことが考えられます。
この記事が銀行の今後を考えるための参考になれば幸いです。