法人税の節約になるなら、法人保険に加入したいという人は少なくないでしょう。
保険外交員に説明されて、法人保険の節税効果がとても魅力的に見えることもあります。
しかし、法人保険は加入したからといって節税になるとは限りません。
解約タイミングや解約返戻金などをしっかり考えて契約する必要があります。
法人保険は節税につながるのか、メリットとデメリットをまとめました。
さらに法人保険の注意点も併せてご紹介します。
Contents
法人保険が節税になる仕組み
法人保険の保険料は損金として経費にでき、節税効果があります。
一般的に法人に税が課されるのは、法人が事業を通して得た利益から経費を計算したあとの所得に対してです。
保険料を経費に加えることによって所得額を低くでき、結果節税となります。
たとえば、法人の益金が2,000万円で、保険料で500万円を損金として計上したとします。
この時点で課税対象の所得は1,500万円となり、支払う税金が減ります。
ほかの経費項目だと、経費にできるものが限られるケースもありますが、保険料は企業の必要に応じて契約できるので、選択肢の幅が広いです。
所得800万円の壁を利用する
資本金1億円以下の普通法人の場合、800万円を超えるかどうかで税率が変わります。
800万円以下の部分に対する税金は15%。
800万円を超える部分に対しては23.20%の税金がかかります。
法人保険料をうまく調整して、所得金額を800万円以下に抑え、低い税率で支払うこともできるのです。
(出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm)
資金繰りがよくなる
資金繰りの向上を期待できるのは法人保険のメリットです。
支払った保険料は保険会社に預けているようなもので、後日保険料の同等額か一部金額が戻ってきますし、途中解約することもできるからです。
法人保険に加入せず、通常の税金を払ってから定期預金や普通預金にお金をプールする場合、手元に残るお金は少なくなります。
しかし、税金を支払う前に法人保険の形で帳簿外にお金を移すことで、より多くのお金を手元に残せます。
法人保険で節税を行うデメリット
法人保険の節税の仕組みやメリットだけでなく、デメリットも確認しましょう。
法人保険の節税はいいことだらけではないからです。
予想外の事態が発生し、対応に迫られるという可能性もあります。
ここでは、主なデメリットをふたつご紹介します。
キャッシュが一時的に減る
法人保険に加入し保険料を支払うと、当たり前ですがキャッシュが減ります。
保険満期に全額、または増額されて返ってくるとしても、それまでは使用することはできません。
プール用の資金と見なすことはできますが、実際の支払いが必要になると解約などの可能性が出てきます。
大きな支払いを控えている場合には、法人保険の加入を延期するのも賢い選択でしょう。
途中解約すると一部返金になる
保険を途中解約すると全額返金されないことがほとんどです。
保険の種類や契約内容にもよりますが、返戻金が保険料の50%を下回ることもあります。
保険に加入して節税できても、途中解約して損をしてしまっては元も子もありません。
保険の契約をする前に、返戻率を確認するのがいいでしょう。
契約期間中のタイミングによって返戻率が変わるものもありますので、自分の企業にとって有利な契約内容かどうかを確認するのが重要です。
注意点
法人保険による節税には見逃せない注意点もあります。
この注意点を考慮せずに保険契約をすると、実際には節税効果を得られないということも生じます。
「保険がむだだった」と、後悔することがないように、しっかり確認したいポイントです。
保険の解約時に税金がかかる
法人保険に加入するときには節税効果がありますが、受け取った保険金・解約返戻金に対して税金がかかります。
つまり、500万円で保険に加入しても、500万円の保険金を受取ったら改めて税金を課されるのです。
そうなると納税の時期を先延ばししただけで、節税効果がないと思われても仕方ありません。
そこで大事なのが、保険解約のタイミングです。
保険金が支払われるときに、再び大きな損金が発生する状況があれば、経費として節税対策できます。
ひとつの方法が社長や役員の退職金です。
大きな額の保険金が支払われても、退職金で相殺できます。
保険加入の段階で、解約タイミングをイメージしておくのは大切です。
保険によって節税できる割合がことなる
法人の保険加入は節税になりますが、保険によって損金と計算できる割合は異なります。
支払った保険料をすべて損金として計上できるのが「全額損金」の法人保険。
しかし、保険料の半分しか損金できない保険もあります。
節税対策を考えると全額損金の保険が一番となりますが、保険期間や解約返戻金の条件が不利なこともあるので注意が必要です。
返戻率で実際の効果にも注目
法人保険による節税効果や注意点については理解したとしても、最後にもうひとつ検討したほうがいい問題があります。
それは、法人保険を利用して節税すると、逆に損をする可能性もあるという点です。
保険金や解約金の返戻率で見る実際の効果について考えてみてください。
返戻率の計算方法
支払った保険料に対して、戻ってくる保険金・解約返戻金の割合を表したのが返戻率です。
たとえば、1,000万円の保険料を支払い、800万円の返戻金が戻ってくれば返戻率は80%です。
保険料を支払う側としては、返戻率が高ければ高いほどうれしく感じるでしょう。
単純返戻率と実質返戻率
先ほど紹介した、支払った保険料に対する解約返戻金の割合を示しているのが単純返戻率です。
実質返戻率は、これに保険未加入時の税負担額を加え、節税効果によるメリットを加えて計算します。
たとえば、先ほど紹介した80%の返戻率を使って考えてみましょう。
1,000万円の保険料に対して800万円の返戻金なので、単純返戻率は80%です。
保険未加入時の場合はどうなるでしょうか。
1,000万円の保険料を支払う代わりに、360万円を税金で支払ったとすると、1,000万円-360万円で、640万円が手元に残ります。
保険に加入した場合の返礼金800万円と、保険未加入時に手元に残る640万円を比較すると、800万÷640万で125%となります。
この場合は保険に加入したほうがメリットがあるといえます。
実質返戻率が100%を切るとメリットなし
先ほど紹介した例では返戻率が80%で、法人保険に加入したほうがメリットの大きい場合でした。
しかし、もし、返戻率が60%で1,000万円の保険料に対して600万円しか支払われない場合、保険未加入時に手元に残る640万円を下回ってしまいます。
その場合、実質返戻率が93.75%です。
実際に、契約内容や解約タイミングによっては、解約返戻金が少なく実質返礼率が100%を下回る結果になることもあります。
その場合は、保険に加入せず税金を払ったほうがお得になります。
途中解約する可能性がある場合は特に慎重に検討するのがいいでしょう。
まとめ
法人保険は賢く使えば節税効果がありますが、ただ加入するだけでは利益を繰り越すだけの効果しか得られません。
むしろ、キャッシュが一時的に減ったり、途中解約すると返戻金が少なくなったりとデメリットが大きくなります。
保険加入の段階で解約時の税金対策をしっかり考える必要があります。
また、保険料が全額損金となるのか、本当に保険に加入したほうがメリットはあるのかなど、いくつかの要素をあわせて検討する必要があります。
法人保険の契約内容を検討する際に、一緒に検討してみてください。