昨年2018年は米国の政策金利上昇に伴い、一時は米国長期金利も3%を超えて推移しました。
また、金利上昇の影響を受けて株価も大きく動いたことも記憶に新しいかと思います。
このページでは、金利の上下が株価に与える影響について解説していきたいと思います。
その中で、金利上昇局面での効果的な運用についてもご紹介しますので是非今後のご参考にしてみてください。
米国の金融政策
世界経済の中心を担っている米国の経済政策は他国にも多大なる影響を与えます。
米国の自国通貨である米ドルはなんと世界取引通貨シェアの4割も占めているのです。
その米国の金利が昨年上昇した、と記載しましたがその大元である米国の政策金利はそもそもどのように決定されるのでしょうか。
米国の政策金利は連邦公開市場委員会(FOMC)において決定されます。
米国議会とは独立した存在・連邦準備銀行(FRB)によって成り立ち、金融政策決定会合は年8回行われます。
このFOMCにおいて、資産縮小と利上が決定・実行されたのです。
経済に大きな影響を与えるため、決定は経済成長率や個人消費、失業率など様々なデータから自国の状況を鑑みて慎重に行われます。
金融緩和的な考えを持つ人はハト派、金融引締め的な考えを持つ人はタカ派と呼ばれ、現FRB議長のパウエル氏はどちらかというとハト派の印象を受けます。
では、なぜ経済引き締め効果のある政策をわざわざ行うのでしょうか?
そもそも日本を含め各国は、100年に1度と言われる金融危機・リーマンショックを受け、利下げを筆頭とした経済活性化のための施策を取らなければなりませんでした。
ですがその当時と比べ現在は順調に経済も回復してきています。
そのため、次に金融危機が訪れた際に対策を行えるよう、経済環境が良好なうちに金利水準を正常化させる必要があるのです。
というのも、金利が0%の状態で金融危機が発生してしまった場合、一番効果的な金利の引き下げという経済政策を行うことができなくなってしまいますよね。
日本は量的緩和路線を変更する目処が立っていませんが、他の先進国は利上げへと準備を進めているのです。
金利上昇が与える影響
では、本題に入っていきましょう。
今回は米国の利上げに焦点をあてて解説していきます。
まず米国利上げに伴う通貨の流れですが、新興国に集まっていた投資資金が一気に流出し米国に戻ってきました。
低金利下では新興国の高金利が魅力となって資金が流入していましたが、安全性の高い米ドルの金利が上昇したことにより投資資金がドルに集中したのです。
わざわざリスクを高めて新興国に投資せずとも、一定の金利を享受できるのであればドルで資産を保有したいと考える投資家は非常に多いようです。
そのため、多くの新興国では自国の通貨が下落し、ドル建て債務の負担急増など経済に非常に悪影響となりました。自国の通貨安を防ぐために政策金利を上げざる得ない新興国もありました。
利上げはその国にとって経済成長の足かせになりますから、新興国の株式市場にも大きなダメージを与えていったのです。
円ドル相場についても、一般的には日米の金利差が広がるとドルが強くなる(ドル高)傾向にあります。市場が大きく動く際、一時的に逆の動きになることもありますが長期的に見るとこの傾向に連動します。
輸出企業が多い日本では円安が株価にとってはポジティブな材料になります。
株価全体に与える影響ですが、正常な範囲の利上げの場合そこまで大きな影響は与えません。
基本的に利上げに踏み切るということは経済が強く、複数の経済指標によってそれが裏付けられた状態だからです。
ただし、例外的に大きく下落する局面もあります。それは財政赤字が大きく利上げによって債務負担の増加が懸念される場合、経済指標が弱含んだ場合などが挙げられます。
昨年10月の下落は史上最多とも言われる財政赤字の悪化も一つの要因と言えるでしょう。
過去に政策金利の上下によって大きく株式市場に影響がでたこともあるので、過大な影響を及ぼさないよう、利上げの決定から実施までは時間をかけて判断されます。
今後の金利動向は?
今年2019年3月のFOMCにおいて、利上げの停止・資産縮小の停止が決定されました。
これは直近の日米貿易摩擦によってGDP成長率などの経済指標が弱くなっていることを受けて決まりました。
利上げを継続することによって米国経済の減速が想定されたのでしょう。
市場予想では利下げの可能性も出てきているようですので、米国の更なる金利上昇は当分見込めなさそうです。
株式市場にはプラスに働き、発表後は日米ともに株価も上昇しています。
日米金利差もまだ大きく乖離していることから、円ドル相場への影響もこの決定では1円弱程度の円高にとどまりました。
資産運用への影響は?
まず債券投資の場合について解説します。
金利上昇局面では数年後に今現在よりも高いクーポンを得られる可能性が高いので、変動金利の債券購入が適しています。
ですが、現在の米国は利上げを停止した上に利下げの可能性まで示唆されていますから、固定金利型の債券で構いません。
今年は大きく上昇する局面はなさそうですから、米国債を購入予定の方は利下げが市場で織り込まれる前に検討した方がいいでしょう。
日本の量的緩和はしばらく続きそうですから、米国の金利が魅力的であることに変わりはありません。
株式投資についてですが、こちらは金利にあまり捉われずに投資することができそうです。
金利上昇局面でしたら、収益改善が見込める金融業や保険業がピックアップ銘柄に挙げられそうですが、むしろ今後は避けたほうが無難なセクターでしょう。
金利要因による円安が見込めない中では為替耐性の弱い輸出企業もお勧めできません。
では、どういった株式の上昇が見込めるかというと、利上げ停止がポジティブに働く銘柄としてグロース株が挙げられます。
成熟企業と比べて借り入れが多いグロース企業は、金利上昇局面では債務の悪化が懸念されますが、反対の局面ではその点が問題視されなくなります。
昨年で金利上昇を悪材料と見なされ大幅に売却されたグロース株を拾うにはいいタイミングかもしれません。また、高配当銘柄についても相対的に魅力が上昇するのでお勧めです。
日本の金利動向は?
最後に日本の金利動向についても取り上げます。
日本についてはしばらく量的緩和が継続すると前述しました。
現在のマイナス金利政策を推し進めた日銀の黒田総裁の続投が決まったことからも、政策の変更は難しそうです。
また、政府が目標とする国内のインフレ率は2%ですが、現在はまだ1%程度です。
利上げはインフレ抑制効果もあるため、この目標値がほど遠いままでは量的緩和の終了もまだ先の事となるでしょう。
そのため、日本の株式市場において自国の金利情勢の影響はかなり軽微なものと言えます。
金利の上下は株式市場を始めとする経済に大きな影響を与えます。
昨年は米国の政策金利上昇と、自国ではないにも関わらず日本にも様々な影響がでました。
それぞれの関係性を理解して、今後の投資活動に役立ててみてください。