投資成功を目指して経済情報を集めていると、米国の利上げに関するニュースを見ることがあるでしょう。
これがどういう意味かを知らない人は多いようです。
米国の金融関連の動きは世界的に影響を与えるので、利上げの意味は学ぶことが賢明と考えられます。
本記事では米国の利上げの意味を解き明かし、世界的な経済への影響を示します。
記事後半では日本の米国の金融政策を比べつつ、経済的影響力の違いを記します。
Contents
米国の利上げとは何か
米国の利上げの意味を、以下の2つのポイントにわけながら述べます。
利上げとは政策金利を上げること
利上げとは、国の政策上の金利アップという意味です。
ここでの金利とは、中央銀行などのお金の流通を決める組織が、世の中の経済にコントロールをかけるべく定める短期金利です。
短期金利は一般人がお金を借りるときにともなうものとは違い、中央銀行などがほかの銀行に貸したお金につけるものを指します。
上がれば銀行は返済義務が生じるお金が多くなって、借り入れをためらいがちになり、下がれば返済義務が軽くなり積極的に借りがちになります。
米国ではFRB(連邦準備制度理事会)が中央銀行の役割を担い、国に出回るお金の量などを利上げなどでコントロールを行っています。
米国利上げは物価の上がりすぎを防ぐため
米国のFRBは過去に何度も利上げを行ってきており、主な目的にインフレの抑制が挙がっているようです。
インフレとはお金が国に多く出回り、1ドルあたりの価値が下がり物価が上がることです。
世の中には日本円やユーロなど、さまざまな通貨価値があります。
「1ドル○円」という風に通貨同士の価値のバランスを示す「為替」という概念で、世界経済は成り立っています。
インフレで1ドルが安すぎたら、海外からの輸入に多くお金を払う必要が出ます。
輸入量が減って物価上昇に至れば、人々の生活も苦しくなります。
以上を防止するために米国は利上げを行うことがあります。
米国利上げで何が起きるか
米国が利上げを決めたら、世界経済に起きる主な可能性を以下に3つ挙げます。
金利上昇で株価が下がる
米国の利上げは、同国だけでなく日本の株価にも影響が及びます。
ドル建てで投資中の人たちが株を敬遠した結果、価値下落に至ります。
米国と日本は経済や文化的な結びつきが強いため、2つの国の株を持っている投資家は多いようです。
米国の株が下がったら、日本株を売って損失分を埋める動きが強まり、2つの国の株価はそろって落ちやすくなります。
円安米ドル高になる
米国の利上げで円安米ドル高になりやすくなります。
たとえば1ドル100円よりも1ドル110円の方がドル両替に多くのお金がいります。
ドル側から見た1円あたりの価値が安くて円安と呼ばれます。
このように米国の利上げでドルの価値は高まりますが、ほかの通貨にとっては多くのお金を払わないとドルに換えられません。
多くの投資家たちは日本円など安い価値をさっさと売って、利益目当てでドルに買い替えるといいます。
米国債券の評価額も落ちる
利上げでその国の債権の評価額にも、ネガティブな影響が及びがちです。
債権をもらったら、金利とともに返してもらうには一定期間持ち続ける必要があります。
しかし保有中に金利が上がったら、その後で買った人よりも損になりやすくなります。
この場合に債権を売るなら、自分のものを安くして相手に有利な条件で買い取ってもらうことが多くなります。
以上のことから金利アップはそれまで債券を持っている人に不利です。
新興国の株式や債券の評価額も落ちる
米国の金利アップは、新興国の経済状況にも影響が伝わります。
現在は新興国の経済成長が話題になりがちですが、先進国と比べて物価が安いところが目立ちます。
利上げで米ドルの価値が高まれば、新興国はドル建ての取引に多くのお金を要します。
発展途上の国が多いので、相手国の利上げが原因で経済成長が止まるリスクも考えられます。
米国利上げは世界経済への影響が大きい?
米国で利上げが起きれば、世界的に大きな経済的影響が生じるとされます。
考えられる理由を2つ示します。
理由1:米ドルは投資で最も使われている
米ドルは世界で最も人気のお金です。
日本円の4倍近く、ユーロよりも3倍近いシェア率を誇ります。
利上げで米ドルの価値が上昇すれば、それを取引に使っている人たちは金欠を恐れて、消費をためらいがちになります。
米国の利上げ政策には、常に世界的経済を停滞させるリスクがあります。
理由2:新興国の成長を止めてしまう
現在は中国、インド、ロシアなど先進国より経済発展は遅れているものの、将来性が高い見込みという意味の新興国が注目を受けています。
しかし米ドルの利上げ確定で新興国の経済成長や将来性を奪う可能性があります。
新興国の人たちがドル建て投資に多くのお金を要するからです。
米国からの輸入品の数などもだんだん減っていき、経済停滞に至るリスクが大きくなります。
米国の利上げは日本の金融政策と何が違うか
米国と日本では金融政策に対するスタンスが異なります。
今後の経済情勢を読むのに大切なので2つの国の金利に対する考え方の違いを学んでおきましょう。
日本は物価安定、米国は雇用安定が目的
日本と米国では、金利に対する考え方が異なります。
日本は物価を安定させるために金利上下を行う方針を続けています。
政策金利が下げれば国民はお金を使うことに抵抗を感じなくなり、需要が増えて物価が上がれば金利を下げて景気を落ち着かせるという考えがあるためです。
米国は雇用安定を目的に、金利アップを推しがちです。
金利が低いと銀行も金貸しで儲からず、景気悪化を気にしがちです。
その結果が失業率の高さなどに結びつくというのが米国の考え方とされます。
仕事に就ける人を増やすために、金利を上げて銀行の利益を多くし、そこから景気成長につなげることを戦略とします。
日本の金融政策はアメリカより世界的な影響が少ない
世界的な通貨シェアにおいて、日本円は米ドルの約1/4とされます。
以上の背景から、日本円の金利変動は世界経済への影響が米ドルより少ないと考えられます。
日本円の金利が上がることで日本株の売りが多くなっても、投資家にとってはほかのさまざまな国という選択肢があります。
特に米ドルやユーロは取引に使う国が多いので、日本円からの乗り換え先としても人気になりがちです。
以上から世界シェアの少ない通貨は投資家にとって「代わりがある」と思われやすいようです。
日本はアメリカよりも金利アップに消極的
日本は世界的に低金利政策が続きがちです。
2013年4月からは金利0%、16年からはマイナス金利時代に入っており、利上げに積極的なアメリカとは正反対の印象です。
理由は日本の借金が1,000兆円を超えているからです。
国の予算に対して収入が少なく、国債の発行量も多くなっています。
金利アップで国債の利子も高くなり借金増大のおそれもあります。
米国も多くの国債を出しますが、FRBが所属するFOMC(米国連邦公開市場委員会)が株価に悪影響を及ぼさないよう、だんだんと金利を上げる能動的戦略で、景気に働きかけています。
借金だけを見て金利引き上げに消極的と思われる日本とは違う戦略です。
ここに2つの国の借金と金利の関係に対する考え方の違いが見て取れます。
まとめ
米国から利上げのニュースがよく出るのは、同国が雇用安定や景気良化などを目的に、政策金利の引き上げに積極的だからです。
日本は借金が1,000兆円以上もあることから金利アップに消極的な印象です。
以上のように国ごとに経済への考え方が違うことがわかります。
株や不動産への投資者は、通貨価値や金利変動による経済情勢で利益や損失を出すこともあります。
以上のことから、世界の経済情勢をベースに投資判断を行うことも重要です。